現地レポート

【現地レポート④】それでも県立松江商業は「全国2勝」を目指す!

2019年12月23日

“赤い虎” が “虹色の湖水魚” を一気に飲み込んだといったところか――。

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会 (以下、ウインターカップ2019)」の女子 1 回戦、開志国際 (新潟) に挑んだ県立松江商業 (島根) だったが49-93で敗れた。その開志国際のチーム名が「Red Tigers」であり、県立松江商業のチーム名が「Rainbow Lakers」なのだ。

「高校総体で県立足羽 (福井) に敗れたときも第 1 クォーターで苦しんだので、夏以降、そこを乗り越えるように練習をしてきました。もちろん開志国際も力のあるチームですが、第 2 クォーターが対等に戦えただけに、第 1 クォーターが悔やまれます」
 県立松江商業の雑賀勇太コーチは試合をそう振り返る。

 それでも夏以降取り組んできたチームオフェンスはある程度形を示すことができた。その自負もある。「あとは詰めの部分と、完成度ですね」と雑賀コーチ。
「高さや能力で劣る地方の苦しさもありますが、それを言い訳せず戦っているチームも多くあるわけですから、そうしたチームに負けないチームづくりを行きたいと思います」
 負けて即来年へと切り替えられるほどサッパリはしていないだろうが、それでも幸いにもスターターのうち、2 人は 2 年生である。夏の県立足羽、冬の開志国際と、全国トップクラスのチームと戦えたことは貴重な経験となる。

 なかでもチームトップの19得点をあげた#13山根示優が残るのは大きい。雑賀コーチも「彼女は中でも外でも得点ができるのが強み。間違いなく来年の軸になる選手です」と信頼を置く。
 その言葉どおり、開志国際戦でもドライブあり、ピックからのダイブあり、そしてピックからポップしての 3 ポイントシュートありと、多彩な攻撃を展開してみせた。

 山根は昨年、つまり 1 年生のときから、今年で13年連続のウインターカップ出場となるチームのスターターに抜擢され、経験を積んできた。しかし彼女の大会経験を見ると「全国ミニバスケットボール大会」も、「全国中学校バスケットボール大会」も、「都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会」にも出場していない。にもかかわらず、1 年生のときからスターターに起用され続けているのは、やはり彼女の持つ得点への嗅覚、感覚の鋭さなのだろう。
 雑賀コーチは今春から同校を率いているため昨年との比較はできないが、それでも「今年の夏から冬にかけて、得点を取ることへの積極性は高くなった」と認める。
 山根自身も意識の変化を自分の成長として挙げる。
「昨年、スターターに指名されたときはびっくりしたし、自分が島根ナンバーワンのチームのスターターで大丈夫かなと不安もあって、上級生に頼りきりになっていたんです。でも今年は自分がやらなければという自覚を持って取り組んだところが変わったところだと思います」

 むろん課題は山積みだ。雑賀コーチもまだまだスキルが足りないと言い、本人もポストプレーなどペイントエリア内でのプレーができてないと認めている。
「チームの得点源として、どんな相手でも得点を決められるようになりたい。そして来年、またこの舞台に戻ってきて、チームの目標である全国 2 勝をあげたいです」
 山根が入学して以降、県立松江商業は全国で 1 勝もあげていない。その 1 勝を飛び越え、もうひとつ先の勝利をも目指すと言うのだ。
 難しそうに聞こえるかもしれない。しかし手をもうひと伸ばしさせさえすれば届きそうな目標のほうがより成長の幅は広い。
 “虹色の湖水魚” たちの目は涙で濡れたが、その奥にある光はまだ失われていなかった。

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