激戦区の神奈川県予選を大接戦の末に制し、9 年ぶりにウインターカップ出場を果たした東海大学付属相模。原田 政和コーチがチームの指揮を執るようになってからは、初めての出場となった。

　チームで掲げた目標は、憧れのメインコート (ベスト8)。だが、全国の舞台は甘くはなかった。1 回戦でいきなり優勝候補の一角・近畿王者の東山 (京都) と対戦し、序盤から相手の高さやテクニックに翻弄される。最後は59-98で完敗となり、一矢報いることはできなかった。

「彼は、チームの魂なんです」

　試合後、原田コーチがそう評した選手がいる。キャプテンとして今シーズン、チームを引っ張ってきた#4 熊谷真希選手だ。

　コートで常に声を出し、激しいディフェンスやルーズボールでチームを引っ張る存在。普段の練習中も、積極的にチームメートを集めて気を引き締める役目を担っていた。

　だが、その熊谷選手をアクシデントが襲ったのは11月23日。大会開幕までちょうど1 か月に迫ったこの日、ひざを負傷し、最低 3 週間の療養を強いられることになったのだ。「熊谷自身も相当へこんでいましたが、彼以上に周りのメンバーが相当ショックを受け、不安な気持ちになっていました。それくらいリーダーシップがあって、チームメートからも私からも信頼を得ている選手」と原田コーチ。

　それでも、熊谷選手は下を向かなかった。「ウインターカップは一生に一回の機会なので、絶対に試合に出たい、という気持ちでリハビリに励みました。それに原田先生が、いい病院を調べたり必死にやれることを尽くしてくれたので…。ケガを治して試合に出て、活躍することが僕にできる恩返しだと思っていました」。

　リハビリの甲斐あって、開幕の 1 週間前にギリギリの復帰。プレータイムは限られたが、この東山戦もコートに立ち、第 4 クォーターも試合終了をコートの中で迎えた。「自分が最後までハードワークする姿を見せて、後輩たちに頑張る姿勢を引き継いでもらいたい、という気持ちでした」と熊谷選手。

 

　3 年間を終え、「きついことも多かった3 年間でしたが、チームメイトにも恵まれましたし、原田先生のおかげでバスケットボールだけでなく人としてもすごく成長できたと思います」と話す表情は、どこかやり切ったような、すがすがしい表情だった。そんな熊谷選手を中心にチームを引っ張ってきた 3 年生たちを、原田コーチは「チームの新たな伝統の、基盤を築き上げてくれた 3 年生でした」と手放しにたたえていた。