現地レポート

【現地レポート⑳】“3年ぶり” が示す桜花学園の強さ

2019年12月28日

 令和初のウインターカップ女王は桜花学園(総体1位/愛知)に決まった。
「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子決勝で岐阜女子 (高校総体②/岐阜) を72-67で下し、3 年ぶり22回目の優勝を飾ったのである。

「この 1 年、ウインターカップで優勝することを目標にやってきていて、いろいろ苦しいこともありましたが、最後にこうして優勝ができて、本当にいい経験ができてよかったです」
 優勝記者会見で第一声をそう発したのは、バスケット人生で初のキャプテンを桜花学園で務めたという#4平下 愛佳だ。
 東海ブロックの新人戦で岐阜女子に敗れた際、井上 眞一コーチから「3 年生がしっかりしなければいけない」「キャプテンがいなかったから負けたんだ」と厳しい言葉をかけられた。高校総体こそ岐阜女子を下して優勝したが、その後に行われる国民体育大会が今年度から16歳以下の大会になったため、平下ら 3 年生が試合から遠ざかり、チームの雰囲気が緩んだときにもやはり「なんだ、この雰囲気は。3 年生が甘い。キャプテンがいないから弱いんだ」と言われた。
 苦境はさらに続く。2 学期の期末試験が終わり、ウインターカップまであと 3 週間というときにも「この雰囲気は優勝をしようとするチームの雰囲気じゃない!」と言われ、練習を切り上げられたこともあった。大会直前に東京で行われた合宿でもいい内容の練習ゲームができず、「3 年生が何もしていないんだ。#9江村 (優有) と#10 (オコンクウォ・スーザン・) アマカに任せっきりで、お前たちは何もしていない」と厳しく追及された。
 つまりギリギリまで厳しい言葉で 3 年生としての自覚を呼び起こされ続けていたというわけだ。

 もちろん平下自身も、自分なりにキャプテンシーを発揮しようと試みてはいた。チームで誰よりも声を出すようにしていたし、練習中もやるべきプレーができていない選手がいたら、そこまで走っていって「ここはこうするんだよ」と教えるようにしていた。
「井上コーチからすると、それでは足りなかったんでしょうけど……」
 そう言って、平下は苦笑を浮かべる。

「今年の 3 年生はみんな仲が良いんですけど、みんなリーダーシップが薄いんです。そこをいつもコーチに指摘されていました。でもそうなったらすぐに 3 年生だけでミーティングをして、言い合って、言い合って、喧嘩になるくらい言い合ってミーティングをしていました」
 そんな 3 年生たちの、苦しみながらも、なんとか壁を乗り越えようとする姿を見ていたからこそ、下級生たちは最後まで 3 年生についていった。
 2 年生の#12前田 芽衣が言う。
「3 年生はしんどいときに 3 年生同士で話し合って、そこを乗り越えようとしていました。自分たちだけでなく、下級生がしんどいときも 3 年生は下級生のことを考えて、声をかけてくれました。そういうところは私たちが来年、3 年生になったときに自分たちのことだけでなく、チームのことも考えらえるようになりたいです」

 ウインターカップは 「真の日本一を決める大会」 と言われ、一年間でどれだけ成長したかを示す大会でもある。常に 「頂点」 を最大の目標とする桜花学園にとっては、ウインターカップでこそ最高の戦いをしなければならないのだ。
 そうして得られた優勝は、結果以上に、その過程を後輩たちに示す重要な要素となる。それがまた翌年以降の貴重な財産となるわけだ。
 今日の勝利で全国優勝67回目、ウインターカップだけでも22回の優勝となる桜花学園だが、実は過去に一度だけ、ウインターカップで 3 年連続で優勝できなかった時期がある。その 1 年目に入学してきた選手は 3 年生になったときに「どうすればウインターカップで勝てるのか」を自分たちで紡ぎ出さなければいけなかった。そしてそれを達成できなかった。
 今大会の桜花学園もまた、今大会を迎えるまで 2 年連続でウインターカップの決勝進出を逃している。今の 3 年生たちは「どうすればウインターカップで勝てるのか」を知らず、その道程を自分たちで紡ぎ出してきた。もし今日の決勝戦で負ければ、井上コーチの就任以降、チーム史上 2 度目の苦い経験を喫し、今の 2 年生たちに同じ重荷を背負わせることになってしまう。
 平下ら 3 年生たちが踏ん張ったことでその “危機” は免れた。桜花学園の下級生たちは、ウインターカップ制覇への道程を、間違いなく目の当たりにしたのだ。

 また桜花学園か……そう思うファンもいるかもしれない。しかし彼女たちは、まだどこかに幼さが残るなかで、さまざまな場面でメンタルが試される――もっと言えば、対戦相手との戦いのみならず、<桜花プライド> を背負った戦いにも打ち勝ったのである。
「22回目」ではなく、「3 年ぶり」というところに今年の桜花学園の強さはある。

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