現地レポート

【現地レポート㉒】“福岡決戦” を制し、福岡第一が大会連覇を達成!

2019年12月29日

 試合開始87分前、まずコートに現れたのは福岡大学附属大濠 (福岡) だった。先頭で入ってきたエースの#14横地聖真がボールケースのなかにあるボールを、続けて入ってくるチームメイトに渡していく。
 遅れること 8 分。次に入ってきたのは福岡第一 (高校総体① / 福岡) だ。給水のためベンチに戻っていた横地が、福岡第一#46小川麻斗と笑顔で握手を交わす。
「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は大会最終日を迎え、男子決勝は福岡第一と福岡大学附属大濠の “福岡決戦” となった。
 試合前、会場となった武蔵野の森総合スポーツプラザの最上階にあるコンコースを歩くと、若いファンが「すごくワクワクしてきた」と言い、子どもをつれた保護者は「コート中央寄りのほうがよく見えるよ。そっちに行こう」と子どもたちを誘っていた。
 選手も、観客も今日の一戦にかける思いが伝わってくる。

 果たして令和初のウインターカップ王者は福岡第一に決まった。最終スコアは75-68。福岡第一は年号をまたぐ大会で連覇を達成したわけだ。

 第 3 クォーターの途中には一時22点差をつけられた福岡大学附属大濠だったが、最後まで諦めることなく戦い、エースの#14横地聖真の 3 ポイントシュートで 8 点差にまで縮めた。その戦いぶりは十分賞賛に値するものだ。
 今日のゲームを迎えるまでに、1 年生大会を含めて今季 8 度対戦している両チームだが、福岡大学附属大濠が勝ったのは 1 年生大会のみ。9 度目となる今回を含めて、それ以外はすべて福岡第一が勝っている。
 追いかけても追いかけても届かなかった福岡第一の背中。その強さを幾度となくスカウティングしてきた福岡大学附属大濠の片峯 聡太コーチはこう語る。
「悔しいけれどもボールへの執着心は、今日のゲームもそうですし、1 年間、どのゲームも及ばなかった。その点に関しては日ごろの積み重ね。その詰め方が及ばなかったなと思います」
 そう言って、2 人の選手の名前を挙げる。
「#54内尾 (聡理)くんと#13神田 (壮一郎)くん。内尾くんのような、どんなときでも迷わず、献身的に、ぶれることなくディフェンスを頑張り、ボールに飛びつくようなプレーヤーを私は育てられなかった。神田選手も同じです。3 ポイントシュートが入らなくても、ゴールに飛び込んできて、オフェンスリバウンドを稼ぐ。#60 (クベマ) スティーブくんだけではなかった。その献身さが、悔しいですけれど、劣っていたと、一年間を通して感じているところです。#8河村 (勇輝)くん、小川くん、スティーブくん、みんな素晴らしい選手です。でも内尾くんと神田くんの存在が、今年の福岡第一の本当の強さだったんじゃないかなと、今日もあらためて思いました」

 一方の福岡第一もまた、成長し続ける福岡大学附属大濠の突き上げを受けながら、1 年を過ごしてきた。その成長ぶりを井手口孝コーチもこう認めている。
「(福岡大学附属大濠は) 中学時代からの力のある選手が多いチームで、横地くんをはじめ、1 年生のときから活躍している選手たちが 3 年目を迎えています。今日のゲームでも横地くんが最後まで諦めずにプレーするところや、#8 木林 (優) くんがインサイドにアタックしたり……そうしたところは昨年まで見られなかったところです。そこが今年の福岡大学附属大濠の成長ではないかと思います」

 お互いがお互いを認めて刺激し合うことで、それぞれのチームが成長し、ウインターカップの決勝戦という最高の舞台で対戦する。むろん勝敗は分かれ、一方が喜び、他方が悔しがることになるのだが、そこで感じことがまた、お互いをより一層高めていく。
 表彰式終了後、両チームが入り混じって撮影した写真は、まさに “ノーサイド” の精神である。そういう視点で見ても、令和初のウインターカップ決勝戦は非常に価値のあるものだったと言えるだろう。

 大会全体を振り返れば、男女ともに “大本命” と言われていたチームが頂点に立った。彼ら、彼女ら以外のチームはすべて負けて終わったわけだが、それはバスケットボール人生の終わりを意味するものではない。むしろ、ここからスタートである。
 騎手の武 豊氏が、かつてこう言っているのを耳にしたことがある。
「圧倒的に多い負けをムダにしないで教訓にできる人が、他の人よりもちょっと勝てるんじゃないかな」
 勝つに越したことはないが、すべてに勝つ必要はない。いくつもの負けが未来の勝ちにつながれば、それは負けではない。
 新しい年号でのウインターカップは、これまでと同様にこれからも、「いま」を「未来」へつなぐ “架け橋” である。


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