【現地レポート③】聖カタリナ学園の “当たり負けしない” ディフェンス
2019年12月23日
夏の高校総体でベスト 8 に進出した県立西原 (沖縄)。その県立西原に、片や 2 点差、他方 1 点差で敗れたチーム同士だけに接戦になるかと思われた。
「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会 (以下、ウインターカップ2019)」の女子 1 回戦、埼玉栄 (埼玉) と聖カタリナ学園 (愛媛) の試合は、結果として冒頭の予想に反して60-83で聖カタリナ学園が快勝した。
最大の勝因は、現代バスケットボールのカギともいうべき 3 ポイントシュートだろう。埼玉栄は14本の 3 ポイントシュートを放ち、決まったのはゼロ。一方の聖カタリナ学園は35本のうち14本を沈めている。
聖カタリナ学園はサイズこそ埼玉栄に劣るが、それは今に始まったことではない。むしろサイズのなさを武器に変えて、ドライブや 3 ポイントシュートで勝負を挑んできた歴史を持つ。しかし一方で現代バスケットはチームディフェンスもシステム化され、単純なドライブ、単純な 3 ポイントシュートを打つことはできない。適切なスペーシングをし、ドライブに対するリアクション (合わせ) をすることで得点シーンを作り上げていかなければいけないのだ。
今年の聖カタリナ学園で、そのカギを握るのは#4 池松美波であり、#5 森美月だ。ともにドライブもできて、3 ポイントシュートも打てる。もちろんドライブからのキックアウトパスもできる。とはいえ、彼女たちがそれだけの力を持っていても、チームとしての動きが合わなければ、宝の持ち腐れになってしまう。
「 (ウインターカップ直前に行った) 合宿からですね、パスが回せるようになったのは……」
チームを指揮して 4 年目となる後藤良太コーチはそう明かす。大会前の合宿で地元の強豪クラブチーム・オレンジブロッサムや、東京に出てきてからはいくつかの学校と練習ゲームを重ねていく中で、選手たち自身がチームオフェンスのなかでスペーシングの感触をつかんできた。それが今日の14本につながったというわけだ。
それだけではない。
埼玉栄が優位と思われた高さを利したプレーを最小限に抑えられたことも聖カタリナ学園の勝因だろう。その立役者が#6 小柳亜結だ。身長は173センチと高くはない。マッチアップする埼玉栄の#2 狩野美里は178センチ。それでも狩野のポストアップには事前のボディチェックで、ペイントエリア内の 1 対 1 にはボディアップのディフェンスで苦しめた。
「あまり自分の精一杯は出せませんでした。もっと失点を抑えたかったんですけど、やられてしまいました」
本人がそう振り返るとおり小柳は狩野に17得点・11リバウンドを奪われているが、少なくとも気持ちよくプレーさせなかったことで、埼玉栄のオフェンスのリズムを狂わせた。14本の 3 ポイントシュートもさることながら、彼女のディフェンスも勝因のひとつとして忘れてはいけない。むろん聖カタリナ学園は伝統的にフットワークを生かしたディフェンスをしているのだが、そこに相手のビッグマンにも “当たり負けをせずに” というキーワードを加えた意味でも価値のあるプレーだった。
夏の高校総体を初戦敗退で終え、その悔しさから夏以降、走り負けもしないよう、また当たり負けをしないよう、走り込みをして脚力をつけてきた。その成果を 2 回戦以降でも見せたいと小柳は言う。
「カタリナのプレースタイルは走って、ディフェンスをしてという形なので、それをウインターカップのコートでしっかり見せたいです。そして回戦が上がれば上がるほど背の大きな選手や相手のエースにつくことになると思うので、体を張って、相手の大きい選手よりも走って、嫌がらせたいです。相手が小さければ、ですか? インサイドで強く行きたいです」
2 回戦の相手は平均身長で聖カタリナ学園を下回る県立郡山商業 (福島)である。