現地レポート

【現地レポート⑦】昭和学院のスーパールーキーが進むべき道

2019年12月24日

 女子日本代表の渡嘉敷来夢が自分自身について、よく使っているフレーズがある。
「私には伸びしろしかないので」

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」に出場している選手たちは男女を問わず、いずれも発展途上の選手たちである。渡嘉敷の言葉がそのまま当てはまるのだが、昭和学院 (千葉) の#8 花島百香はその言葉がより似合う 1 年生だ。
 チームは 2 回戦で浜松開誠館 (静岡) に55-66で敗れた。花島はスターターに起用され、その期待に応えるかのようにチームトップの20得点・18リバウンドを奪ったが、チームを勝利に導くことはできなかった。
 試合後にゲームを振り返ってもらうと、それまでグッとこらえていた涙があふれだしてきた。
「悔しいです。前半の終わりに私たちが離されかけていたとき、私のディフェンスがよくなくて 3 ポイントシュートを何本も決められてしまって……それで勢いづかれてしまいました。切り替えようと思ったんですけど、そこからミスが何本も続いてしまいました」
 スタッツ上のミス、つまりターンオーバーはゼロ。しかし数字に表れないミスを悔いるあたり、彼女もまた “スーパールーキー” の一人と言っていい。

 オフェンスはまさに非凡。今はまだインサイドプレーが中心だが、それでもきれいなシュートフェイクからワンドリブルをして決めたミドルシュートはお手本のようなプレーだった。また彼女のプレーで目を引くのは、相手のコンタクトに負けずシュートを決めきる体の強さと、指先に触れたボールをしっかりと自分の体のほうに巻き付け、マイボールにできるハンドリング力だ。
 その話を向けると、先ほどの涙はスッと引き、今度は笑顔でこう答えた。
「体の強さについてはまだまだです。体幹 (の筋力)、まったくありませんから。でもアンダーカテゴリーの日本代表合宿で萩原美樹子コーチから『キラーポイント』と呼ばれる、ペイントエリア内の深いところまで攻めたときのフィニッシュを教わったので、それを実践しました。ハンドリングは中学生のときに、リバウンド練習でティップしたボールを巻き込む練習をしていたので、それが生きました」
 過去の財産だけではない。昭和学院に入って、今まさに鈴木親光コーチから教わっていることも彼女にとっては貴重な財産となっている。
「中学までは感覚でプレーすることが多かったんですけど、高校に入ってから『ディフェンスを見る』ことをよく言われています。感覚だけでは通用しないと。それと、高校は 1 人ではないところが中学とは違うと教わりました。周りのチームメートをよく見て、シュートなのか、パスなのか、ドリブルなのかを判断しなければいけないと」
 練習のために練習をするのではない。試合でプレーするために練習を行わなければならない。花島はそうした数々の練習で培った貴重な財産をしっかりと蓄積し、試合でそれをうまく運用している。そんなバスケット IQ の持ち主でもある。

 主力の一人として迎える2020年度はアウトサイドのシュートも身につけたいと花島は言う。鈴木コーチもそれを認めたうえで、彼女が同校 OG の赤穂さくら・ひまわり姉妹 (ともにデンソー アイリス)のように世界に羽ばたく選手になるためには、こんなことが必要だと説く。
「いい素質は持っているんですけど、いい子すぎるんです。もちろん私生活ではいい子であったほしいんですけど、プレーヤーとしてはもう少しダーティーというか、ずる賢い部分も身につけてほしいですね。頭のいい子なので、その頭の回転をうまく使って、相手の嫌がるところをつけるようになってほしいです」
 素直さとずる賢さのあいだにこそ花島の “伸びしろ” はある。

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