現地レポート

【現地レポート⑰】岐阜女子の司令塔が挑む“初”のファイナル

2019年12月27日

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子準決勝、岐阜女子 (高校総体 2 位 / 岐阜) は京都精華学園 (京都) を81-63で下し、2 年連続のファイナル進出を決めた。

 圧倒的だった。
 第 1 クォーターを29-12で終えると、第 2 クォーター以降も京都精華学園の攻撃を伝統の強力ディフェンスで単発に抑え込み、オフェンスに転じればインサイドとアウトサイドのバランスの取れた攻撃で得点を重ねていく。

 その起点となるのが岐阜女子 #5 藤田 和である。身長172センチの大型ポイ
ントガード。視野が広く、状況判断にも長けている。クイックネスこそ特筆
ということではないものの、正確なアシストでチームの得点シーンを演出し
ていく、文字どおりの司令塔である。昨年のチームでも正ポイントガードを
務めていたが、前回大会で岐阜女子が優勝を決めたとき、彼女はコートの上
にいなかった。ベンチにすらいなかった。直前に左ヒザの膝蓋骨を疲労骨
折し、ベンチの後ろに設けられた応援席で優勝を眺めていたのだ。
「(昨年) 優勝したことはうれしかったのですが、やはり自分がゲームに出て
いなかったので少し悔しかったです」

 昨年度の大会を率直にそう語る藤田だが、もちろん落ち込んでいるだけで
はなかった。
「私はドライブが苦手なんですけど、卒業する前の池田 (沙紀 / 筑波大学 1 年) さんや木下 (七美 / 名古屋経済大 1 年) さんが残っていたので、どう抜くのかを外から見て学んで武器にしようと思っていました。今年はドライブからのアシストが増えたのはそのおかげだと思っています」
 ケガをしないに越したことはないが、ケガをしても失意の底に沈み込むことなく、何かしらを得ようとする前向きさが、ケガをする前の彼女よりもさらに進化させたのだろう。

 藤田自身にとっては “初めて” となるウインターカップの決勝戦は、ライバル・桜花学園 (高校総体1 / 愛知) との頂上決戦になる。今シーズンは東海ブロックの新人戦でこそ勝っているが、それ以降は一度も勝っていない。だからといって、もちろん負けるつもりもない。
「インターハイでは最後のシュートを決めきれずに、自分たちのミスで流れを持っていかれました。だからインターハイ以降、1 対 0 のシュートを確実に決める練習をしてきましたし、#4 林 (真帆) をはじめとしてアウトサイドのシュートは入るようになったので、今度は負けません」

 藤田の姉・歩 (拓殖大学 3 年) は岐阜女子 2 年生のとき、ウインターカップ初優勝に貢献したが、3 年生のときは決勝戦で桜花学園に敗れている。妹もまた 2 年生のときに優勝をしているが、彼女自身はその舞台に立っていない。明日、岐阜女子が桜花学園に勝てば、藤田自身にとって姉に追いつき、その姉が成し得なかった最上級生としての優勝を経験することになる。
「絶対に勝ちたいです」
 少し大げさかな表現もしれないが、明日の決勝戦で勝つことは藤田姉妹にとっての悲願でもある。

NOW LOADING

TOP