現地レポート

【現地レポート⑫】福岡大学附属大濠が見せた“男気”のあるディフェンス

2019年12月25日

 戦略勝ちである。いや、その戦略を遂行しきった選手たちを褒めるべきか。

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子 2 回戦、開志国際 (新潟) と福岡大学附属大濠 (福岡) の対戦は 2 回戦屈指の好カードと言われていた。試合は予想に違わぬ接戦となったが、最後は76-82で福岡大学附属大濠が開志国際を振り切った。

「(開志国際の#14ジョフ・) ユセフくんは素晴らしい選手ですが、今日は彼ではなく、#12 ジョーンズ大翔くんを徹底して抑えようと考えました。そうしてユセフくんに頑張ってもらうことで、彼は肝心なところでもうひと踏ん張りできなかったですよね」
 そう語るのは福岡大学附属大濠の片峯聡太コーチだ。ユセフの運動量を増やすため、普段、福岡県内のライバル、福岡第一と対戦するときはむしろ抑えているトランジションを意識的に増やして、彼を疲れさせた。それが一番の勝因と言うわけだ。

 もちろん徹底的に抑えると言っても、ジョーンズはそう簡単に抑えられる選手ではない。結果的にもユセフの24得点に次ぐ、チーム 2 番目の16得点を取られている。それでもボールを持たせないよう、フェイスガード気味のディナイディフェンスをして、気持ちよくプレーをさせなかった。

 実行したのは福岡大学附属大濠のキャプテン#4 西田公陽と、#5 高木寛大の 2 人だ。片峯コーチも、30得点を挙げた#14横地聖真よりも、ビハインドで終わるだろうと考えていた前半をリードで終えた立役者の#11岩下准平よりも先に、彼らのディフェンスを評価した。
「彼らが戦略を崩さなかったことで、横地らほかのメンバーも勇気づけられて、大丈夫と思えたのでしょう」

 2 人のうち、特に西田はアウトサイドからの得点力もあるシューティングガードだ。にもかかわらず、彼は「横地が得点を取ってくれると信じていたので、今日の試合に関してはオフェンス 3 、ディフェンス 7 くらいの配分でプレーしました」 と言うのだ。それくらい開志国際戦では、ジョーンズをいかに苦しめるかが大命題だったというわけだ。
「ジョーンズくんは右ドライブが得意な選手だとスカウティングしていたにもかかわらず、いきなり右ドライブをやられたり、ファウルをしたり、前半は思ったように守れませんでした。でも後半もきっと彼が来るだろうと思っていたので、そこは強く意識して守るようにしました」

 ジョーンズ自身は「確かに 1 対 1 ではタイトに守られましたけど、どちらかというとそのディフェンスよりも、カバーに来ていた横地選手の動きが想像以上に速くて、キックアウトもできなかったし、ブロックされたりもしました」 と言っている。
 しかしそれは西田や高木がボールを持たせないようハードに守ったからこそ、ジョーンズがボールを受けたときには横地が適切なヘルプポジションにつけられたということでもある。

 西田は言う。
「ディフェンスは気持ちでやるしかないと思っています。もちろんトレーニングや足の運びもあると思うんですけど、絶対に止めてやるという気持ちがなければ相手のエースは止められません。修正するところはあると思いますが、今日はそこでうまく守れたと思っています」
 エースが決めて、ルーキーが援護射撃をする。オフェンス面を見れば横地や岩下の存在がクローズアップされそうだが、やはり片峯コーチが試合後にまず挙げた福岡大学附属大濠の “男気” あるディフェンスこそが、勝敗を分けた大きなポイントだった。

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