【現地レポート⑲】悔し涙とともに切った新たなスタート
2019年12月27日
男子準々決勝、最終試合は明成 (宮城) vs 北陸 (高校総体 2 位 / 福井) の対決。今年のインターハイ 3 回戦でも対戦し、北陸が75-70で競り勝って、勢いそのままに決勝まで勝ち上がったことは記憶に新しい。明成にとっては、夏の雪辱を果たすためのリベンジマッチとなった。
しかし、結果的には65-86で完敗。序盤から#12米本 信也選手に次々と 3 ポイントシュートを沈められ、焦りからオフェンスも単発に。それでも要所で#6 菅野 ブルース選手や#8 山﨑 一渉選手がシュートを決めて10点前後で食らい付いていたが、9 点差で入った第 4 クォーター、北陸#5髙橋 颯太選手の 3 ポイントシュートなどで突き放され、リベンジとはならなかった。
試合後、「足りない部分がまだまだたくさんある」と述べた佐藤 久夫コーチ。ただ、「そういう意味では、まずメインコートに来られたことを評価したいと思います。インターハイよりも、点数的にはやられました。でも自分たちの弱い部分を補って、慌てるミスが減ってきたことは成長だと思います」 と収穫もあった。
また、「1 年生がコートに 3 人いる中で、3 年生の#12木村 拓郎、#10蒔苗 勇人がよく支えてくれた。自分のことだけでも精一杯なのに、後輩を支えながらよく頑張ってくれたと思います」 と佐藤コーチ。下位回戦も含め、下級生を縁の下の力持ちとして支えた 3 年生たちを高く評価していた。
中でも#12木村選手は、今大会の前までなかなか求められた仕事が果たせず、B チーム落ちを経験するなど苦しい時期を過ごしてきた。「先生から 3 年生としてもう一段階、人間としての成長、強くなることを求められていたと思うのですが、大会直前まで気持ちが沈んでしまっていました」 と木村選手。
だが、吹っ切れたのは東京入りしてから。現在大学で活躍する卒業生たちとOB戦を実施したとき、「先輩から『最後、大事なときに成功できるのは、今まで苦労や困難を一番乗り越えてきたやつだ』という激励をもらいました。自分が下級生のときの先輩たちの頑張りを思い出して、自分が最後にやらなければ、と吹っ切れました」 とのこと。それが飛び込みリバウンドや激しいディフェンスなど、3 年生らしいプレーにつながり、チームのベスト 8 進出に大きく貢献したのだ。
今大会で高校バスケを終え、下級生に「優勝という目標に向けて、最後まで粘り強く絶対にあきらめないで全力で戦い抜くチームになってほしいです」 と夢を託した木村選手。また、自身も次のステージに向け、「大学では自分の課題である得点力も身に付けていきたい」 と、さらなる成長を誓っていた。
試合直後、コートの横で佐藤コーチが 1 年生エースの#8 山﨑選手に、「負けて悔しいんだったら、泣くことを我慢するな。思い切り泣け」 と声をかけ、その言葉に山﨑選手が号泣するシーンがあった。それについて「悔し涙を忘れないで、喜びの涙に変えてほしい」 と佐藤コーチ。
次のステージに進む 3 年生も、未熟ながら高い将来性を秘めた下級生も――明成の選手たちは皆、悔し涙とともに新たなスタートを切った。