【現地レポート㉑】東山の “サムライ” が大舞台で感じた幸せ
2019年12月28日
ファイナル進出を懸けた男子準決勝の第 1 試合、東山 (京都) vs 福岡第一 (高校総体① / 福岡)。昨年のウインターカップ、今年のインターハイと対戦し、どちらも福岡第一が勝利してきたカードだが、今年度、練習試合も含めて負けなしだった福岡第一に10月の交歓大会で唯一土を付けたチームこそ東山。互いにライバルと認め合うチーム同士、注目の一戦となった。
立ち上がりから、快調にシュートを沈めていった東山が主導権を握った。ディフェンスでも素早い戻りで福岡第一を走らせず、#9 ムトンボ ジャン ピエールもゴール下でことごとくブロックショットをお見舞いする。福岡第一はオフェンスが重たくなり、結局28-38と前半を終えて10点ビハインド。だが第 3 クォーター、#54内尾 聡理を中心に福岡第一は気迫のディフェンスでボールを奪い、#8河村 勇輝があっという間に得点につなげて勢いに乗る。このクォーターだけ見れば、30-11と攻防で圧倒。東山は第 4 クォーターも 1 ケタ差で食らいついたものの、再び追い付くには至らず、59-71でタイムアップ。夏のリベンジとはならなかった。
「ずっと目指してきたこの大舞台でプレーできて、幸せでした」
試合直後、涙を流しながらもそう言って笑顔を見せたのは東山のキャプテン・#5 脇阪 凪人だ。悔しくないわけではない。大澤コーチが「“サムライ” みたいなやつです」 と評するほど、脇阪はストイックで闘志あふれる負けず嫌い。福岡第一への雪辱の思いは人一倍強く、特に広島県出身の脇阪と山口県出身の河村はミニバス時代から対戦してきた仲で、「勝ちたかったですね。ずっと負けてばかりだったので…」 と言う。幼少期から追い続けた背中に、近づけはしたが、あと一歩及ばなかった。その悔しさの大きさは、想像に難くない。
それでも、脇阪がすがすがしい表情を見せるのは、やれることはやってきた、という誇りがあるからだろう。「あれだけやって負けたのなら、仕方ないです。本気でやった結果なので。やり切ったという気持ちは強いです」 ときっぱりと言い、「福岡第一のような、思い切り全力でぶつかれる相手とこんな大舞台で戦う機会がもらえて、本当にありがたい。福岡第一は本当に強かった。河村はやっぱりすごかったです」 と素直に相手チームをたたえた。
指導者の道を目指すため、卒業後はバスケットボールを続けない予定だ。小学生のころから全国ミニバス大会に出場するなど、プレーヤーの最前線を走ってきた脇阪にとって、現役引退は大きな決断だったはず。ただ「今年 1 年キャプテンとしてやってきて、『選手の力をいかに引き出すか』とか、『どうやってこの選手を盛り立てようか』とか、チーム作りについていろいろ考えてきて、指導者になりたい気持ちは強くなりました」 と、そこに迷いはないようだ。
「次は指導者として、こんな大舞台に戻ってこれたらいいなと思います」 と、この先に続く道を見据えた脇阪。その夢が叶うとき、また「幸せだ」という言葉が聞けるはずだ。